更年期を迎えた方が膣に痛みを感じる原因

更年期を迎えた方が膣に痛みを感じる主な原因は以下のとおりです。

なかでも「萎縮性膣炎」は、更年期を迎えた方が膣に痛みを感じる主な原因です。
放置をしていても治ることななく、症状が進行する可能性があるため対策が必要です。

萎縮性膣炎とは？症状と性交痛の関係性

萎縮性膣炎は、主にエストロゲン（女性ホルモン）の減少によって引き起こされる膣の炎症で、更年期や閉経後の方に多く見られる症状です。

具体的には以下のような症状が現れます。

・乾燥
・かゆみ
・痛み
・違和感
・性交痛
・排尿時の不快感
・不正出血
・頻尿
・膀胱炎

萎縮性膣炎の症状は、性交痛と密接に関連しています。潤いのある膣は摩擦を緩和し、痛みを感じにくくなる役割を果たします。
しかし、乾燥した状態では性交時に摩擦が強くなり、結果として痛みが生じやすくなるのです。

さらに、膣の粘膜が薄くなり弾力が低下することで、外部からの刺激に弱くなり、わずかな摩擦でも痛みを感じることがあります。
萎縮性膣炎によって膣の組織が脆弱化し、小さな傷や炎症が発生しやすくなるため、性交後に痛みや不快感が続くことも珍しくありません。

萎縮性膣炎のメカニズム

萎縮性膣炎のメカニズムは、エストロゲンの減少によって引き起こされる一連の変化から成り立っています。

以下の一連の変化が、萎縮性膣炎のメカニズムです。

1．エストロゲン（女性ホルモン）が減少する

更年期や閉経を迎えることで女性ホルモンのエストロゲンが減少します。
エストロゲンは、膣や外陰部の健康を保つために、以下のような重要な役割を果たしています。

・膣粘膜を厚くする
・コラーゲンを生成し膣内にうるおいを与える
・膣内のpHバランスを調整する

エストロゲンが減少すると、ホルモン生成がうまくできなくなり、体にさまざまな不調をもたらします。

2．膣や外陰部が萎縮し乾燥する

エストロゲンが減少し、膣壁が薄くなり弾力が失われると、膣が萎縮します。
膣が萎縮することによって膣の柔軟性が低下し、外部からの刺激に対して敏感になりやすくなります。

さらに、膣内のうるおいも減少し、結果として膣が乾燥した状態になるのです。

また、外陰部もエストロゲンの減少による影響を受けます。外陰部の皮膚が薄くなり、乾燥しやすくなることで、かゆみや炎症が生じることもあり、不快感の一因となります。

3.膣や外陰部に傷がつき炎症を起こす

乾燥した膣壁や外陰部は、性交時などの摩擦によって傷つきやすくなります。
傷がつくと炎症が起こり、膣内の赤みや腫れ、かゆみや痛みなどの症状が現れます。

膣や外陰部が炎症を起こすことで、膣炎などの感染症を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。

萎縮性膣炎になった際に自分で行える対処法

次に、萎縮性膣炎になった際に、自分で行える対処法を紹介します。

性交時にリューブゼリー（潤滑液）を活用する

リューブゼリーを活用することで、膣内の潤い不足を補い、摩擦を軽減できるので、性交時の痛みや不快感を軽減できます。
リューブゼリーは精製水を主成分としており、膣内に影響を与える成分は入っていないため安心して使用できます。

全国の産婦人科や泌尿器科などでも使用されており、安全性が確認されています。
女性・男性問わず使用でき、コンドームと併用しても問題ありません。リューブゼリーは、薬局やネットで手軽に購入できます。

ただし、リューブゼリーは膣内環境を根本的に改善するものではありません。痛みが続く場合は、医師に相談しましょう。

保湿クリームなどで乾燥を予防する

保湿クリームを使用することで膣内や外陰部の乾燥を防ぎ、うるおいを保つことができます。
特に更年期を迎えた方や、萎縮性膣炎による乾燥に悩んでいる方にとって、保湿は非常に重要です。

肌に優しいデリケートゾーン専用の保湿クリームを使用することで、効果的に保湿を行えます。

膣の保湿ケアは、入浴後などデリケートゾーンを清潔な状態にしてから行いましょう。
また、保湿クリームを塗る際はコットンやティッシュなどの使用を避け、清潔な指先でやさしく塗ることが大切です。

摩擦によって粘膜を傷つけることを防ぎ、保湿効果を最大に引き出すためにも丁寧なケアが必要です。
デリケートゾーンを清潔に保つことを意識し、保湿力の高い製品を選んでケアを続けることで、乾燥や不快感の軽減が期待できます。

膣に痛みや違和感がある際の注意点

膣に痛みや違和感がある際の注意点は以下のとおりです。

膣のトラブルは放置していても自然に治らない

膣のトラブルは、放置していても自然に治ることはありません。膣の痛みや違和感は、何かしらの問題が起きているサインです。
放置していると症状が悪化したり、他の合併症を引き起こしたりする可能性もあるため注意が必要です。

早めに治療を受けることで、適切な対処ができるため、症状が持続する場合は医師に相談することが大切です。

性交時に痛む場合は無理をしない

性交時に痛みを感じる場合は、無理をしないようにしましょう。
無理をして続けると、膣や外陰部にさらなる負担や傷を与え、症状が悪化する可能性があります。

また、パートナーに「痛みや不快感がある」と伝えることも大切です。
コミュニケーションを取ることで無理な性交を避けるだけではなく、ともに解決策を見つけるための大切な一歩となります。

パートナーが状況を理解しサポートしてくれることは、心理的な負担の軽減にもなるでしょう。
性交痛の原因が明確でない場合や、痛みが続く場合は、医師に相談することが重要です。

適切な治療を受けることで、症状の改善や再発の予防が期待できます。

萎縮性膣炎の場合は市販薬を使用しても根本的な治療にはならない

萎縮性膣炎の場合は、市販薬を使用しても根本的な治療にはなりません。
デリケートゾーン用の市販薬はありますが、膣内専用の市販薬はないためです。

かゆみや不快感を一時的に和らげることができても、根治には至りません。ただし、処方薬の「エストリオール」膣剤を使用すれば、症状が改善される場合があります。

ホルモン補充療法（HRT）で、更年期症状の改善に効果が期待できます。
エストリオールは、他のエストロゲン製剤と比較すると低用量です。

膣周囲のみに作用するため、全身への影響が少なく安全性の面で優れていると考えられています。
当院では、患者様の症状に合わせて適切な治療方法を提案していますので、安心してご相談ください。

まとめ

更年期を迎えた方が膣に痛みを感じる主な原因は、萎縮性膣炎です。
女性ホルモン（エストロゲン）の低下によって膣の粘膜が薄くなり、乾燥や炎症を引き起こします。

萎縮性膣炎は、性交痛とも深く関係しているため、早めの対処が重要です。
自己判断で市販薬を使用するだけでは改善しないことも多いため、症状が続く場合は医師に相談し、適切な治療を受けることをおすすめします。